2013年3月18日月曜日

奥浩哉の漫画『変 HEN』でジェンダーを学ぶ(フーコーも)

昨日、この記事→http://riekonaito.blogspot.jp/2013/03/blog-post_17.html
を書き、以下のような予告をしました・・・

ほとんどが日光に曝された
オタクの森にも「踏み入れていないゾーン」が
あるはずなんです。

そこで、たぶん誰もまだ触ってないゾーンを
一生懸命探してみたところ、
漫画家・奥浩哉先生の作品の初期のあたり

(いまから24年ぐらい前の作品群)
・・・なんじゃないか?
と思ったので、次回は奥先生の初期の
マンガについてブログに書きたいと思います。


↑これが予告でした。
というわけで・・・漫画家・奥先生の
初期の作品について自分なりに解説してみたいと思います。

まず、初期の奥作品についてですが、
奥先生が爆裂な巨乳マニアであるため、
そちらばかりに気がとられる青年漫画となってしまい・・・
ストーリーやキャラクター像の分析が
いままでまともになされてこなかったのではないか?と思います。

「胸がでかい」の衝撃で頭が真っ白になるくらい
胸を強調して描かれる作家さんでしたので・・・。

しかし、いま、改めて、初期の奥作品を眺めてみると
その奥深さに感銘を受けるんです。

奥先生が「女の子をすごーーーくよく観察」して描写していること、
そして「全く新しい女子像」も登場させていること、
なにより「ジェンダー意識」についての考察が深い。

「新しい女子像」「ジェンダー意識」の
軸で、もう一度、奥先生の初期作品を眺めてみましょう。
(これをきっかけに同性愛者の哲学者フーコーの哲学書も読もうという企画でもある)

では、まず、奥先生の
平成元年~平成4年までの作品群に出てくるキャラを
おさらいしてみましょう!!


のちの長編作品『変 HEN』のベースとなる短編より。
『変 HEN』に登場する
「吉田さん」「山田さん」というキャラのプロトタイプ版が登場します。

吉田さんのキャラ、新しすぎるんだよな・・・

2013年、つい先日「ノマドセッ*ス女子」なる概念が出現し
世間を呆れさせましたが

・・・・実はこの概念、いまから20年以上前に
すでに奥浩哉先生が
「吉田さん」というJKキャラとして描いていたのよ。

彼女、完全なるノマドで、男の家を渡り歩くJKなの。
しかもそれで生計を立てているという・・・・・。



そして、これは平成元年~4年にかけて描かれた作品群の中に
出てくる「佐藤くん」「鈴木くん」

鈴木(リーゼントのほう)が一方的に佐藤くんを
好きになるという同性愛の話なんだけど・・・

これ、決してBL好きの女子に向けて描かれたものじゃないんだ。
連載されていたのもヤングジャンプだしね。
鈴木くんはもともと不良で女の子はいくらでも手に入るポジションに
いながら、同性愛者ではないけれど
「佐藤くん」だけピンポイントで好きになる・・・という話。

これ、ジェンダー意識を問い直すマンガだったと思う。
先述のノマドの吉田さんも、なぜだか同性の「山田さん」だけ
ピンポイントで好きになるのだ。(他の女子には興味なし)
だから百合漫画とかではない。
一般の「王道」を崩し、ジェンダーのバリエーションを
提示した良作なんだ。

しかも、このマンガ、バブル景気でトレンディドラマまっさかり・・・
の時期に描かれたものなのです。

それを前提に考えると、見えてくるものがあるかも。

トレンディドラマって基本、あたりまえのように
男性は女性を好きになり、
女性は男性を好きになる。

そんな状況の中で、
異性にモテモテの「鈴木」「吉田」が
突然同性相手に恋に落ち、「佐藤」「山田」に純愛を捧げる。
長編ではこの4人の人間関係が入り乱れて面白い。

奥先生、狙いどころが凄くイイんだな~

アンチ・トレンディドラマなんだ。

暗黙の了解となっていた、異性愛=王道ってのを
意外なところからひっくり返してくるこの作品。

そして、これらの短編集をベースにして
描かれた長編連載漫画『変HEN』には
両性具有のキャラも出てくる。
 
両性具有という
このテーマ、いまでこそドラマ『IS』


・・・・・・・・・・・・・で一般認知されるように
なったけれど、当時はメディアに表出することは少なかった。

しかし、奥先生、平成6年頃に既にマンガ『変HEN』に
登場させているのだよ~





この時期、性的マイノリティをキャラとして
カラッと明るく登場させた青年漫画って
レアだったように思う。
 
この両性具有の西条さん、
戸籍は男で、性器は両方あり、
付き合っている彼女とは性経験あり
でも男性も好き・・・
・・・という感じで描かれておりました。
 
性的マイノリティについての参考文献としては
この本がいいと思います。

 
この本のP51~
 
1)性自認というものは、決して自動的に単純に
成立するものではない。
 
2)多くの人が解剖学的性別と一致した性自認に至っているのは、
たまたまそのように事が運んだからである。
 
3)たまたまそのように事が運んだ人は
性自認が「多くの要因の総合的帰結」であることを
自覚しないまま生きている。
(胎児期に受けるホルモン作用の変動で
脳の性別が性染色体の性と一致しないことがある。
また、奥先生の漫画に出てきたように
身体的に両性具有の場合もある。)
 
4)性同一性障害に対し、奇異の目でみること、同情すること、
両方的外れである。
当事者が抱えている「困難」を理解することが大切。
 
5)同性愛に関しても、同じような姿勢が大切。
 
========================
同性愛については、同性愛者の哲学者フーコーが書いた
哲学書をご紹介しまっす。
 
フーコー自身が同性愛者ゆえか、
古代ギリシャの世界から同性愛賛美の要素を
引用しておりますね。
 
この本のP239~
 
ギリシャ人は、自分と同じ性のものへの愛と
別の性のものへの愛とを、2つの排他的な選択、
根本的に異なる2つの行動類型というふうには
対立させてはいなかった。
 
P240~も凄い
 
ギリシャ人の男女両性愛、この言葉が
ギリシャ人は若者や娘を同時もしくは順次、愛することが
できたとか、結婚している男は自分好みの若者を
もつことができたとか、青年時代には若者好みなのに
後にはむしろ女が好きになるのが通例であったとか、
の意味であればギリシャ人は「男女両性愛者」だったと、
たしかに言ってよい。
<中略>
彼らの見解では、男なり女なりにたいして欲望を
いただかせるにいたるもの、ただ一様にそれは
性差はなんであれ、美しいものたちに対する
自然本性によって人間の心のなかに植えつけられた欲なのであった。
 
・・・つまり、古代ギリシャ人の恋愛観って
「私は男が好きです」「私は女が好き」
「私は男も女も好きです」・・・・・・・・という類のものじゃない。
 
もっとシンプルに「美しければ好き」
 
・・・という考えだったんだな。
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話を『変 HEN』に戻そう。
 
日本のバブル期、オシャレな男女が都会で
トレンディに恋愛している様子がメディアに出ていた。
それに対して、「純愛ってもっと違うだろ」という
アンチテーゼとして打ち出したのが『変 HEN』だと思うんだなぁ。
 
同性愛を主軸としたんじゃなくてバブリーな恋愛に対する
もっと純化された「純愛」ってのを描きたかったんだと思うんだよね。
そのために、プラトニックな同性愛の
『変 HEN』を奥先生が描いたのでは?
 
もちろん、男女の恋愛でも純愛は描けるんだけど
男女の純愛は物語化すると冬ソナ系になる。
そして、それらは、なかなか新鮮な物語にはならない。
 
純愛を描くには「子供の恋愛」を描くっていう方法もあるのだが
 
奥先生のように、異性愛者が突然、同性に惚れるという
パターンを描くことにより、純愛ってものの
素晴らしさが強調されたように思える作品だった。
 
さて、話は変わりますが・・・
この奥作品で、「新しい女子像」として
「滝川さん」と「早映菜ちゃん」という存在が出てくる。 
この2人は1994年頃にコミック『変 HEN』に登場する。
 
彼女たち、男系の趣味を持つ女子なんだけど・・・
決してそれをネタに男性のコミュに入り
とはしていないのだ。
 
ひたすら、己の技を磨き、その技で日本のコミック界の
レベルを上げたいと願う最強アニムスを持つ女子だ。
 
ユングでいうところのアニムス第四段階の女性像ね。
 
イメージわかないと思うので図像を・・・
漫画家で大先生なのに、カワイイ中学生早映菜ちゃんです。男性21歳と偽って 漫画家の活動をしています。
早映菜ちゃん、絵柄渋すぎるぜ・・・・・・
そして左のコマにいるのが
早映菜ちゃんと友達になる
漫画描きの高校生「滝川さん」
 
滝川さんもむちゃくちゃ渋い絵を描くのだ↓
しかも、滝川さんは、プロの漫画家を
目指しているわけではなく、
ただひたすら創作が好きな
桐島の前田のような精神性
を持った女子。
プロになれる技量はあるけど、ならない派。
 
渋い職人気質の女子2人が並んだコマ。
 
DTのような心を
持った女子
(男系趣味は邪道モテのためではなく己の追求のため)
・・・・・・っていう女子像は
もっと推していきたい所存です。
 
身近な事例もあるし JBの部屋を見てくれ↓
 
少なくとも、「ノマドセッ*ス女子」を推すよりも
己の追求のために男系趣味に打ち込むDT系女子のほうが
好感が持てるのだが・・・。
 
本気で職人技を磨いていく女子が増えたら
もっと日本全体が面白くなると思うんだよね!
 
雌ガール、女子マネ服あたりに行ってしまう女子が
いてもそれはそれで良いし、きっと必要とされているから
推されている女子像だとは思うんだよね。
 
だけど、そんな風潮に疑問を持つ女子がいたら、
何か打ち込むことを見つけて本気で技を磨く
「滝川さん」「早映菜ちゃん」を思い出して彼女らを
ロールモデルにすればよいかと。
 
この記事でも
セックスよりも面白いことを見つけろ
・・・と書きましたが、女子の場合も・・・
雌ガール化
に迎合できない人は、女子の中にも
きっとどこかに存在するDT力
を磨いたらどうだろう?・・・という提案で終わります。
 
 
====================================
ちなみに、『変 HEN』ですが・・・これドラマ化されているのよ。
(主演はまさかの佐藤藍子)
 DVDBOXは以下
 
 

コミックセットもある↓

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