2015年6月17日水曜日

<その2>ツイン・ピークスマニアックス〜登場人物裏読み講座*BENとジャコビーと丸太おばさんとジョシー〜

90年代に一大ブームを巻き起こした

テレビドラマ『ツイン・ピークス』を

掘り下げるこの企画。

前回のツイン・ピークスマニアックスのリンクは以下

http://riekonaito.blogspot.jp/2015/06/blog-post_16.html


今日は、ツイン・ピークス登場人物

裏読み講座!!
注:個人的な見解がかなり入った裏読みです



「ベンジャミン・ホーン」



『ツイン・ピークス』第4話で、ホテル経営者のベンジャミン・ホーンと
キャサリンが逢引をするシーンに銃声が聞こえる。
さらに、ベンジャミンが風呂に入る時、
エルヴィスのフィギュアを片手に持ち、
ポケットからはカジノのチップをこぼす。
これらの表層(ベンジャミンという名のホテル経営者、
エルヴィス、カジノ、銃声)から
深層を読みこめばラスベガスの歴史、
そしてベンジャミン・シーゲルという
“実在の人物”が浮かび上がってくる。


もともとラスベガスの発展は、ベンジャミン・シーゲルという
実在のマフィアが抱いた壮大な夢が発端であった。
彼の強引な計画は周囲のマフィアの反感を買い、
さらには愛人にも裏切られ、結局ベンジャミン・シーゲルは
銃殺されてしまうが、ベンジャミンの建設した
カジノホテル“フラミンゴ”(1946年創業)は
ラスベガスの発展の象徴的存在となった。

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「ジャコビー先生」



公式副読本『ツイン・ピークスの歩き方』によれば、
ジャコビーは「思春期に、論理実証主義派の哲学を捨て、
かわりに漫画“スパイダーマン”を読んでいた」とある。
彼が思春期に捨て去った「論理実証主義」とは何なのか。

もとをたどれば1921年哲学者ヴィトゲンシュタインが
『論理哲学論考』を発表し、
「哲学的問題に最終的解決を与えた」と主張、
その影響を受けてウィーン学団が論理実証主義を提案したのが始まり。


その『論理哲学論考』の思想は以下の短い文に濃縮されている。

「語りえぬものには、沈黙しなければならない」

語りえぬものとは、神秘のことだ。

ヴィトゲンシュタインは
精神分析の祖フロイトを評価していたが、
両者は対立する部分もある。
フロイトは科学主義的。
それに対しヴィトゲンシュタインは言語の限界を主張し
神秘に触ろうとはしなかった。

つまり、ジャコビーが思春期に捨てたものとは『論理哲学論考』的な思考。

ジャコビーがフロイト派の象徴であることは、
彼のボビーに対する診察スタイル
(寝椅子に患者を寝かせて自由連想させる)からも分かる。

ゆえに、とりあえず、彼はフロイトの象徴と(仮)で
見ても良いが、ただ、後にナラティブセラピーやハワイの療法などを
取り入れて療法を変えているので精神医療の擬人化と見ても良いかも。
6話の最後、ジャコビーがマデリーンの変装に釣られて、
うっかりおびき出されているうちに、
ジェームズはジャコビー邸に侵入する。

ジャコビーがうっかりしているうちに
ジェームズはボビーの罠に嵌められる。
たったこれだけの短い逸話で精神分析医フロイトと
その弟子達の系譜であるフロイト派が、
アメリカの若者たちを“ある種の混乱”に巻き込んだことが表現されている。

精神分析の背景にある思想は無意識における抑圧からの解放であるが、
それは、同時にアメリカの若者を堕落させる一因となった。
抑圧の解放は堕落へと繋がりかねない。

つまり、アメリカの精神病理のうつし鏡として重要な役割を
果たしているのがジャコビーなのだ。
なお、精神分析の祖フロイトは自身の売名のためにコカインの研究をし、
それを家族や友人に見境なく勧め、
さらには論文を書いてコカインの有効性を
世界中に喧伝した。
(参照:H.J.アイゼンク『精神分析に別れを告げよう-フロイト帝国の衰退と没落-』)

つまり、ツイン・ピークスの

ローラがコカイン中毒になり堕落した背景には
精神分析学者フロイトが構築した疑似科学の帝国が存在したのだろう。

なお、ジャコビーの左右のレンズの色を変えたメガネは、
それで頭脳のバランスをとっているというのが自説だが
(参照:『ツイン・ピークスの歩き方』)
そのような説にはもちろん科学的根拠など無い。

つまりかつてアメリカで疑似科学的なものが
宗教的権威にとって代わろうとした結果、危険な薬物が蔓延し、
アメリカの田舎町ツイン・ピークスにまでコカインが流通するように
なったというわけである。

アメリカでは、フロイト派の精神分析は1980年代から解体の一途をたどった。
にもかかわらず、90年代初頭になってもアメリカの片田舎ツイン・ピークスに
居を移して生業としての精神分析を続けるジャコビー。ちょっと面白い。

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「丸太おばさん」


5話、ブックハウスボーイズが向かった山小屋にいた「丸太おばさん」。
パイロット版では「単なる変わり者の女性」程度にしか見えなかったが、
ここにきて、彼女は事件の鍵を握る重要な目撃者となる。

正確に言えば、彼女自身ではなく、
彼女が抱えている「丸太」のほうなのだが……。

彼女はブックハウスボーイズにこんなことを言う。
「ここはフクロウには見えないわ」
「待っていたわ。2日も遅れた」

……あたかも賢者や予言者の如き振る舞いをする彼女の存在は
どう解釈したらいいのだろうか。
ヒントは5話冒頭、やたら大音響の歌声でその存在をアピールした
「アイスランドからの団体客」にあるだろう。

アイスランドのルーツについて、
アイスランド大使館の公式ホームページの記述を見てみよう。

9世紀にノルウェーや他の北欧の国々からやってきた人々によって建国された。
これらの人々はアイスランドにやってくる途中、
アイルランドやスコットランドに立ち寄り、
ケルト系の住民をアイスランドにつれてきた
したがって、アイスランドの言語や文化は北欧だけでなく
ケルト文化の影響も受けている」
…と明記されている。

ゆえに第5話は、ケルト神話で読み解けば良いか。
古代ケルトの僧であるドルイドが丸太おばさんに相当するだろう。
特に、アイルランドのドルイド(ケルト人の社会における僧侶のこと)は
王に対して予言や助言を行ったという。

しかし、解せないのは、なぜ丸太おばさんのパートナーは丸太なのだろう、
ということだ。

それは…先ほど、ケルトのドルイドの話をしたが、
そもそもドルイドと「木」は切っても切り離せない関係性にあるのだ。

丸太おばさんが常に丸太を抱えている理由もおそらくそれだ。

ドルイドはヤドリギが寄生した樫の木
(樫の木にヤドリギが寄生するのは稀ゆえに信仰対象となった)を神聖視していた。
(ただし丸太おばさんのそれは樫ではなく「ポンデローサマツ」だが…)

樫の木信仰に関しては、JG・フレーザーの『金枝篇』を読み解く必要がある。
フレーザーによれば、樫の木への崇拝は、
アーリア系のすべての民族に見られるという。
なぜなら古代、樫の木がきわめて多く、
それは古代の人々の生活を支えていたからだ。

また、樫の木への信仰はアフロディーテ
(ツイン・ピークスの赤い部屋に登場する像)にも
リンクもする。『金枝篇』に、
「トゥロイゼン(古代ギリシャの都市)では
アフロディーテは“実をつけないオークの女神”という尊称で崇拝されていた」との
記述があるからだ。

しかし、ドルイド僧と丸太おばさんをイコールで解釈するのも少し考えものだ。
丸太おばさんが抱えている丸太の木の種類は『ツイン・ピークスの歩き方』に
掲載されているが、それは樫の木ではなく、ポンデローサマツの丸太なのである。

そこで、改めて、「マツ」と「ドルイド」……
この2つのキーワードから考えてみると、丸太おばさんの存在は、
アメリカの超絶主義作家ヘンリー・D・ソローの代表的著作
『森の生活』からインスパイアされたものと考えたほうが自然だ。

『森の生活』には「時にはマツの木立まで散策に出かけることもあった…
(中略)…あのドルイド僧ならオーク(樫の木)の木立の中で行う礼拝をやめて、
ここで礼拝したことだろう」という名文がある。

つまり丸太おばさん=アメリカ超絶主義の中で復興したケルト文化の
象徴と解けばよいかも。

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「ジョシー」


ジョシーは香港出身だが、彼女の出身高校をトレーディングカードで調べてみると
日本のフジモト高校出身、とある。日本…… 

彼女は日本で教育を受けていたのだ。

それをふまえて第1話を見ると、

ジョシーの登場シーンの頭上に
扇子が飾ってあることに気づく。
扇子は日本で発明された後に
中国に伝わった日中文化融合の結実であり、
ジョシーもそのような存在か。
    
ツイン・ピークスが存在しているという設定のワシントン州と
日本の移民は関係がある。
(特にジョシーがショッピングに出かけるシアトル)

明治維新を機に、アメリカに渡った日本の移民は
その後日系アメリカ人となったが、
ワシントン州シアトルは移民の窓口であった。
移民が増えると、移民の手に土地が渡るのを恐れたアメリカは
アジア人や日本人に土地が渡らないよう
「外国人土地法」で彼らを規制していた。
また排日運動は特に「製材所」を中心に起こったのだ。

ジョシーとその周辺の人間関係が複雑に絡み合う
舞台として「製材所」が選ばれた背景には
そのような史実が存在しているのだろうか?

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