2015年8月15日土曜日

ツイン・ピークス裏読み小ネタ講座〜ジャコビーの手品、ハロルドの蘭、ルーシー&トリメイン〜

これまで書いたツイン・ピークス解説をまとめてみましょう。

アクセス数ナンバー1・宇宙一わかりやすい解説
http://riekonaito.blogspot.jp/2012/08/blog-post_16.html

ネタバレを含むラストシーン解説
http://riekonaito.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html

銀河系一マニアックな裏読み〜TPの中のネイティブ・アメリカンについて〜
http://riekonaito.blogspot.jp/2015/06/blog-post_16.html

裏読み講座〜丸太おばさんなど〜
http://riekonaito.blogspot.jp/2015/06/ben.html

書籍で読み解くシリーズその1<シークレット・ドクトリン>
http://riekonaito.blogspot.jp/2015/08/blog-post_10.html

書籍で読み解くシリーズその2<荒地>
(以下のリンクは隔週刊ツイン・ピークスの宣伝を含みます)
http://riekonaito.blogspot.jp/2015/08/blog-post_88.html

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↑まずはこれらのリンクをお読みくださいませ。

今回は裏読み小ネタ解説の回にしようと想います。

==裏読み小ネタ解説その1<ジャコビーの手品>==============
カウンセリングで、ボビーはローラに関するトラウマをジャコビーに話す(第5話)。
ボビーはローラの心の中の邪悪に引っ張られるようにして、
堕落の道を歩まんとしていた。

そこで、ジャコビーは過去にローラから聞いていたであろう
“ボビーの性体験”という弱み、
さらにツイン・ピークスの町で誰よりも
ローラの内面を理解していたジャコビー自身が、
ローラとの交流で得た知識を駆使してボビーの心を開かせるのである。


これは、事前に得ておいた情報をカウンセリングに利用する
“ホット・リーディング”というテクニック。
前号収録の第4話を思い出してみよう。
保安官事務所で、ゴルフボールを耳に2個入れて
1個口から出す手品をしていたジャコビーだが……
これは彼のカウンセリングテクニック
(つまり、事前に耳から情報を得ておいて、それを口から出す)を
指していたのだろう。

==裏読み小ネタ解説その2<ハロルドスミス、なぜ蘭?>========
ハロルド・スミスは第10話から登場し、
今号第11話〜第12話でもキーパーソンとなっている。
彼が大切に栽培している「蘭」の花とは何の象徴か?

『ツイン・ピークス』第10話が1900年〜1920年の
アメリカ文学を象徴していたことをヒントにして考えれば、
すなわちその時代の後にアメリカ文学史に名を残した作品が
そのモチーフのヒントとなるだろう。

フィッツ・ジェラルド『グレート・ギャッツビー』(1925年)である。
この作品の中に「蘭」のモチーフは3回登場する。

1)人間離れした美しさの映画女優を蘭の花に喩えたくだり

2)ヒロインであるディジーが好む蘭の花のような「人工の世界」(すなわち社交界)

3)ディジーのベッドの傍に置いてある現実の蘭の花

概して言えば、アメリカ狂騒の20年代を時代の徒花を
蘭に喩えたと考えれば良いだろう。

なお『グレート・ギャッツビー』の中で、
ディジーを愛したギャッツビーは孤独な死を迎えることとなる。
となれば、ハロルド・スミスもそのような最期を迎えるのか……?

====裏読み小ネタ解説その3<9話から10話にかけて空気が変わる>====
第10話は第9話から一転、夢幻の世界から醒めたように感じることだろう。
第9話まではアメリカロマン主義のモティーフが『ツイン・ピークス』を彩っていたが、
ここからは自然主義小説のモティーフが彩ることとなる。

自然主義小説とは1900年に文学の主流になった
“現実のありのままを描こうとする小説”のことだ。
(小説『シスター・キャリー』など)


そこに描かれているのは消費文化指向である。
現代社会のありのままを描こうとする際、
消費社会が生み出した虚像とそれに
踊らされる人々を描かないわけにはいかないのである。

『ツイン・ピークス』の登場人物の中で、
消費文化の魔術に振り回されているのは、ルーシーである。
ルーシーは朴訥な現実生活(=アンディ)に飽き、
中身は無いけれども華やかな虚像(=デパートの店員トリメイン)に惹かれる。

===裏読み小ネタその4<婦人のモデルは…>=========

ランチサービス配達先(ローラが宅配しており
ドナがその仕事を継承した)の“クリーム・コーンを嫌悪する婦人”は
実在の詩人エミリー・ディキンソン(18301886年)を彷彿とさせる。
なぜならば、引きこもりの生活をする老婦人、苦しそうに咳き込む様子、
ヴィクトリア朝を思わせる白いドレス……
詩人エミリー・ディキンソンも終日、白いドレス
(著名な批評家はエミリーがこだわった白という色を
ヴィクトリア朝の理想の女性像と結びつけた)を着て家に引きこもり、
気管支炎を患っていたという。

なお、エミリー・ディキンソンの処女作は1890年(彼女の死後)に出版された。
『ツイン・ピークス』第9話では、この1890年の作品が引用され、
それに続く第10話では1900年〜1920年代のアメリカ文学のモティーフが登場する。

===裏読み小ネタその5<山萬>==============
10話のラストシーン、蘭を手入れするハロルドの持ち物が映し出される。
蘭を手入れするための小さな鋸だ。そこでハッとする。
鋸の柄に日本語が書いてある。「山萬」の文字。

山萬とは兵庫県にある山萬製作所のことで、
その製作所が製作した園芸用ミニ鋸はいまも販売されている。
ハロルドが交配して作りローラに供えた蘭の形をよく見てみれば、
東洋蘭を彷彿とさせる形をしている。
“東洋蘭と日本語”これらが意味するものとは?
今号の収録話のテーマである自然主義文学と東洋への恐怖(黄禍論)は
近しい関係性にある。
たとえば自然主義者のジャック・ロンドンは黄禍論者だ。
しかし一方で、同時期に、
ジャポニズムへの熱狂(たとえば蝶々夫人ブーム)も
生まれていたのである。

なお、当記事小ネタ2で、『グレード・ギャッツビー』との関連を
説明しましたが、この小説『グレート・ギャッツビー』に出てくるような
フラッパーガールが着用する衣服のデザインは
ジャポニズムの賜物です。(詳しくはこのリンクへ)
http://riekonaito.blogspot.jp/2015/08/blog-post_48.html
アメリカ文学史は東洋への恐怖、そして憧憬を
呑み込みながら先へと進んで行くのであります。

ジャポニズムにつきまして…詳しくは以下のリンクへ!
(ベイマックスと喪服でジャポニズムを解説しています)
http://riekonaito.blogspot.jp/2015/08/blog-post_48.html

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